2021.10.01
ラクスルのコーポレートシステムの取り組み
コーポレートシステム&データ戦略部の加藤です。
9月1日に情報システム部門をサポートする新規事業ジョーシスがリリースされましたが、ニュース記事などご覧になりましましたでしょうか。
お読みになって、ラクスルのコーポレートITの取り組みはどうなっているのと思われた方もいるかもしれません。今回はラクスルのコーポレートシステムの取り組みについてご紹介したいと思います。
ラクスルのコーポレートシステムチームは、数年前、インフラを担当する基盤事業部と同居する形でスタートしました。
基盤事業部が外向けのサービスの構築・運用の傍ら、社内のネットワーク・インフラ構築、ITコストの管理、ヘルプデスクの運用、社内システムの開発・運用と守備範囲を広げつつ、徐々に組織の構築がされていきました。
現在は
- 事業部のサービス構築・外向けインフラ構築サービス提供
- 社内のインフラ&ヘルプデスクの運用
- コーポレートシステム&データ基盤
の3つの部門に分かれて組織が構成されています。
このうち、3つの目の部門コーポレートシステム&データ戦略部のコーポレートシステムグループでは、SaaSの導入支援や社内サービスの開発・運用を行っています。今回はこの部分を掘り下げていきます。
対象範囲と基本方針
コーポレートシステムの対象範囲としては、
- コーポレート部門が利用するシステム(経理システムなど)
- 全社横断で利用されるシステム(勤怠管理、ワークフロー、ヘルプデスク、人事系システムなど) などがあります。
現在はありがたいことに世の中に多くのSaaSが提供されています。コーポレートの各部門ですでに利用していて運用にのっているものは刷新の必要があるまでは対象外とし、新規・刷新導入するSaaSやSaaS導入できない領域の内製システム、その連携などが対象範囲です。
SaaS利用と内製開発に関しては原則以下の方針に従って導入・開発を判断しています。
- セキュティ・統制を維持しながらも、コストパフォーマンスのよいSaaSを組み合わせて利用する。
- マスターデータの保持、SaaS間の連携、表計算ソフトでのデータ管理の負の解消のために内製開発を行う。
- グローバルや子会社・関連会社で利用するSaaSは極力そろえるが、無理に揃えることはしない。
ラクスルを支える4つの内製システム
さて、上記の方針に従って内製開発をしている4つのシステムをご紹介します。
(1) CorpDir
従業員向けのコーポレートディレクトリサービスです。また、IT資産管理台帳やヘルプデスクのチケット機能も備えています。

従業員の管理は原則、SmartHR(※)を以前から利用してきておりますが、事業成長とともに、海外グループ従業員が増えたり、組織変更が頻繁に発生したりするため、CorpDirをマスタ・オブ・マスターとして位置付け、各サービスに連携するようにこの数年で変更を行いました。
ヘルプデスクのチケットシステムは、以前はGoogle Form(※)やワークフローシステムで行われていましたが、ヘルプデスクチームがタスクを一元して管理したいという要望があり、またリーズナブルなサービスを見つけられなかったため、簡易ワークフローを兼ね備えたチケットシステムを開発しました。
今年、ベトナムやインドのメンバーが利用できるよう国際化対応も行いました。
(2) Raksul Feedback
人事評価システムで、OKRの設定、期末評価、360°フィードバックなどの機能を備えています。このシステムは、CTOの泉が2016年から開発をしてきたものに改良を加え、運用しています。昨年、国際化対応を行い、ベトナムやインドメンバーも利用しており、国を超えてフィードバックを行ってもいます。
(3) Road
経理チーム向けの業務改善システムです。経理チームは、会計システムとしてfreee会計(※)を利用してきました。
事業が成長するにつれ、仕訳データを生成したり、前渡金の管理や与信を管理するのが大変になったりと、いくつか業務改善したい領域が出てきたため、既存で利用するサービスを補完する形で開発を行ってきました。ラクスル事業の原価仕訳などもこのシステムで生成しています。
(3) Raxel
ITコスト管理ツールです。明細レベルでIT関連の予算・実績を管理するためのツールです。各部門への配賦処理なども行っています。
CorpDir, Roadのデータベースはデータ分析ツールのRedashからも利用可能にし、閲覧のみで良いデータに関してはアプリケーションでの機能開発を行わず直接SQLを書き、マスターデータ・モニタリング用データとしても活用しています。
技術スタック&開発プロセス
内製のツールはいずれも、事業部の技術スタックと近いものを利用しています。全社横断でのエンジニア勉強会が週一回あるため、相談や技術共有なども随時行いながら開発を進めています。
- インフラ: AWS ECS, CodePipeline(※)
- サーバサイド: Ruby on Rails, rspec
- フロントエンド: Vue.js, slim, jQuery, Angular
開発も事業部と同様、スクラム開発を導入しています。1スクラムチームで行っているため、定期的にコーポレートの各部門に直接ヒアリングを行って課題を抽出し、各部門の業務改善が全体的に進むようにバランスを見ながら、インパクトの大きいものを優先しバックログを作成します。
プランニング、実装、コードレビュー、受け入れなどのリリースのプロセスも他のチームと変わりません。
少人数ながらドメイン領域がかなり広いので、ペアプロや勉強会などを取り入れつつ、チーム内で知識共有が進むように工夫を行っています。
まとめ
ラクスルのコーポレートシステムに関するご紹介をしました。基本的はコーポレート部門向けのSaaSを積極的に導入しつつ、補完するような形で内製システムの開発・運用を行っています。
内製システムは、初期立ち上げメンバーや私自身が、印刷や物流などのサービス開発に携わってきたためその経験を活かしつつ、また社内での異動を考慮して、技術スタック&開発プロセスはなるべく社内の他のチームと同様のものにしています。
コーポレートIT領域の面白さは
- ドメインが幅広く深い
- ラクスルの成長を支える基盤システムを開発できる
- 利用者が身近にいて協力しながら一緒によりよいIT環境を作り上げられる実感を得られる
などがあると思います。
ラクスルのコーポレートシステムでの取り組みは、新規事業であるジョーシスの立ち上げにも活かされています。技術スタックの選定、システム構成、データモデリングなど、Hacobell Connect やコーポレートシステム群をベースにジョーシスの基盤を開発しました。
ラクスルのインフラや業務に合わせて内製システムを構築して、今後もよりよいコーポレートIT環境を提供していきたいと思います。

※SmartHR は株式会社SmartHRの商標または登録商標です。
※Google Form はGoogle LLCの商標または登録商標です。
※freee会計 はfreee株式会社の商標または登録商標です。
※Amazon ECS, CodePipelineは、Amazon Web Services, Inc.またはその関連会社の商標または登録商標です。
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